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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)3343号 判決 1987年5月28日

控訴人 大窪進

右訴訟代理人弁護士 碓井清

被控訴人 株式会社千葉銀行

右代表者代表取締役 緒方太郎

右訴訟代理人弁護士 澤田和夫

右訴訟復代理人弁護士 河邉義範

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決理由説示(原判決七枚目表七行目冒頭から九枚目裏末行末尾まで)と同一であるから、これを引用する。

1  七枚目裏四行目の冒頭に「再抗弁1の事実のうち、被控訴人が本件手形(一)ないし(三)を支払のため呈示したところ、」を、同行目の「日商貿易が」の次に「天童ゴムの契約不履行を理由に」を、九行目の「第七号証」の前に「原本の存在とその成立につき争いのない」をそれぞれ加え、五行目の「提供金を預託」を「提供金の資金として四五〇万円を東武信用金庫に預託」と改める。

2  八枚目表四行目の「異議申立提供金」の次に「の資金として四五〇万円」を、七行目の「(三)については、」の次に「第一次的には、」を、同行目の「根抵当権」の前に「本件不動産に対して設定している」を、八行目の「回収する」の次に「ことに努める」を、一一行目の「定期預金に」の次に「して被控訴人銀行に預入」をそれぞれ加え、九行目の「異議申立提供金」を「前記預託金四五〇万円」と改める。

3  八枚目裏二行目の「異議申立提供金」を「前記預託金」と、同行目から三行目の「被告の定期預金とした」を「被控訴人銀行に対し期間二年の定期預金にして預けた」と、三行目の「日商貿易により」を「日商貿易の請求に基づき」とそれぞれ改める。

4  八枚目裏九行目の「認めさせるに足る」を「認めるに足る」と改め、同行の次に改行のうえ、次のとおり加える。「約束手形を支払期日に支払のため呈示した後の所持人は、当該手形の振出人、裏書人など手形債務者のうち誰に対してでも直接手形金の支払を請求することができ、その請求の順序は、手形債務を負担した順序にかかわらないものであり、しかも債務者の一人に対する請求は、他の債務者に対する請求の妨げとはならないのである(手形法七七条一項四号、四七条一、二、四項)から、右のような約束手形の所持人が振出人に対し手形金の支払を請求し、振出人との間で手形金の支払に関し何らかの合意に達したとしても、右合意が所持人の振出人に対する手形金請求権を放棄することを内容とするものでない限り、所持人は、なお裏書人など他の債務者に対し手形金を請求することができると解すべきである。本件において、被控訴人が本件手形(一)ないし(三)に関し日商貿易との間でなした合意は、後記説示のとおり、手形請求権を放棄することをその内容としたものではなく、単に日商貿易に対し支払を一時猶予したにすぎないものであり、かつ、前示のとおり、被控訴人が本件手形(一)ないし(三)の振出人である日商貿易から右手形金の支払を受けた事実が認められない以上、前記合意の成立ないし日商貿易に対する請求により、右手形の裏書人である天童ゴムに対する被控訴人の手形金請求権が消滅することはありえないし、この理は被控訴人の天童ゴムに対する本件(一)ないし(三)の手形の買戻請求権についても同様と解するのが相当である。

したがつて、再抗弁1の主張は、採用することができない。」

5  九枚目表八行目の「不当な」の前に「法律上の原因に基づかないで得た」を、末行の「異議申立提供金」の次に「の資金として東武信用金庫に預託した金員」をそれぞれ加える。

6  九枚目裏二行目の「これによつて、」から三行目の「やむをえないもの」までを次のとおり改める。

「しかも、日商貿易の前記預託金返還請求権は、日商貿易の有する資産の一つではあるが、これが本件手形(一)ないし(三)の支払資金に優先的に引き当てられるという意味において、天童ゴムなどの手形関係者や前記大木や控訴人ら本件不動産の競売関係者らが、右預託金返還請求権につき何らかの優先的権利を有するというものではないから、右預託金が日商貿易に返還されたからといつて、右手形関係者や競売関係者らの権利行使が格別阻害されたということにはならない」

二  よつて、右と同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却する

(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 鈴木經夫 山崎宏征)

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